京都鉄道博物館の保存車両では唯一の戦前製寝台車です。このマロネフ59形のように、現存する戦前製寝台車はほとんどなく、貴重な車両です。マロネフ59 1は、1938年にマイロネフ37292として、神戸市の鉄道省鷹取工場で新製されました。マイロネフ37290形は皇族及び貴賓客用寝台車で3台製造されましたが、マロネフ59 1はそのうちの1台です。1等は個室寝台、2等は中央通路式2段寝台となっています。個室は2室あり、各部屋に1人用寝台と1人掛けソファーが装備されています。2等寝台の定員は12人で、国内の鋼製寝台車では初のプルマン式寝台(座席状態ではボックスシートになる方式。戦後の2等寝台、現在でいうA寝台では一般的になった)です。1941年の称号改正でマイロネフ37292はマイロネフ38 3と改められる事になります。戦後は進駐軍に接収されて軍番号1308、SAN ANTONIOと命名され、手ブレーキが撤去されてスイロネ37 3となりました。返還後、皇太子殿下(現・今上陛下)が成年に達し公用での利用が増える事を予測し、スイロネ37 1は御料車14号として整備、一方のスイロネ37 3は非公式旅行用として手ブレーキと車掌弁を装備してマイロネフ38 1となり、1955年にマロネフ59 1に改称しました。本車は一般営業に使う事はありませんでしたが、寝台サービス向上の先駆けとなりました。マロネフ59 1は、御料車14号とほぼ同一の車両で、このような車両を間近に見学出来る事は貴重といえるでしょう。