リントヴルム
ドイツやオーストリアで語り継がれる、イモムシのような巨大なヘビ型の竜で、主に泉や湿地、洞窟に棲んでいるといわれます。人間を6人食べた、あるいは数頭の牛を荷物ごと丸吞みにしたという逸話もありますから、リントヴルムはそれなりに大きかったのでしょう。血液には毒が含まれており、退治した勇士が尾の先端に刺されたり、血液に触れてしまったりした為に、道連れになってしまったという話もあるそうです。尾の先端は鋭く尖っており、これで毒を注入するのかもしれません。魚の基本形の一歩手前の段階から立体的に折り上げていきましたが、何だかツチノコにも見えてしまいました。でも、特徴となる尖った尾の先端は、ちゃんと作ってあります。頭から、舌も折り出しました。
属性:風
伝承地域:ドイツ、オーストリア、スイス等
登場する物語:「ヘッセンの伝説」等
写真右側が頭で、尾の先端は左側です。
ヴリトラ
ヒンドゥー教やその前身となったバラモン教の神話で大暴れする魔物で、聖仙カシュヤパ(あるいは創造神トヴァシュトリとも)が自身の子を殺した雷神インドラに復讐すべく生み出しました。文献によって出自や姿形も異なり、ドラゴンでは無く巨人とされる事もあります。インドラと戦い追い詰めますが、神々の仲裁を受け入れ和平を結び、加護の力で昼と夜のうちは乾いたもの、濡れたもの、木、岩、通常の武器、インドラのヴァジュラ(武器)等による攻撃では傷を負わないという、無敵に近い肉体を手に入れました。干ばつや冬の化身でもあり、竜巻やかまいたちを生み出せるともいいます。「ドラゴン最強王図鑑」の挿絵を見ながらあれこれ折ってみたところ意外と難しく、とても1枚で折れるようなものではありませんでした。大きな折り紙を2枚組み合わせて作ってみたら、翼の無いヴリトラが出来上がり、翼を15cm×15cmの折り紙2枚を組み合わせて貼り合わせてみたところ、「これでいいんじゃないか」と思うような出来栄えになりました。足は少し折って立ちやすくしています。翼の糊付けはバランスが難しくて支えまでしました。
属性:風
伝承地域:インド
登場する物語:「リグ・ヴェーダ」「マハーバーラタ」等

フェルニゲシュ(騎乗)
ハンガリー民話に登場する竜達の首領で、人間の言葉を理解したり葉巻を吸ったりと、異彩を放つ黒竜です。足が5本ある魔法の馬を飼っており、20歩で30kmも進むんだそうです。とある城にあった石造りの桶に封印されていましたが、この城の王女からの求婚に応じて王になったヤーノシュという青年が、「禁制の間」に立ち入って封印を解いてしまいます。その後、黒竜フェルニゲシュは王妃をさらい逃走。物語に登場する他の竜達は、「黒竜フェルニゲシュは自分達の首領ではあるが皆が不快に思っており、自分達が1000体いても勝てず、かろうじて石桶に閉じ込めた」という旨の話をし、ヤーノシュに助力します。ヤーノシュは何度も王妃を救出しようとしますがその都度フェルニゲシュに奪還され、一度は殺されてしまいますが、助力していた竜達が魔法の力で蘇生させました。その後ヤーノシュは「火の海の中にある7の7倍の島」に向かい、6本足の馬を手に入れた事で、王妃の救出と黒竜フェルニゲシュの討伐に成功しました。僕はこの竜を、5本足の馬とセットで作る事にしたのですが、15cm×15cmの複合作品では馬とのバランスが悪く、紙を切り分けて少し小さくしてみました。すると、馬とのバランスもよくなりました。馬の足にもかぶせ折りを使い動きをつけてみました。
属性:闇
伝承地域:ハンガリー
登場する物語:「勇士ヤーノシュと黒竜フェルニゲシュ」

レヴィアタン
キリスト教の聖典「旧約聖書」に登場する巨大な海の怪物です。「旧約聖書」では神が創造したといわれていますが、人々を苦しめる神々の敵とも書かれています。その中の「ヨブ記」によれば、体は分厚い二重の鱗で覆われ、背中には盾のような背ビレが隙間なく並び、腹は陶片のような無数のトゲに覆われているんだそう。この鱗は「青銅は朽ち木、鉄も藁に過ぎず、いかなる武器も受けつけない」程硬いらしいです。また、その体温も海が沸騰する位高く、その口からは炎、鼻からは煙が出ており、泳いだ場所には海水が沸騰した光の帯が出来るといいます。高速で泳ぐレヴィアタンが通り過ぎるまで3日もかかったといいますから、相当な巨体なのでしょう。キリスト教の「7つの大罪」のうち、「嫉妬」を司る悪魔ともいわれます。魚の基本形から折ったレヴィアタンです。極めてシンプルな作品ではありますが、重厚感あるレヴィアタンが出来たと思います。
属性:水
伝承地域:イスラエル
登場する物語:「旧約聖書」の「イザヤ書」「ヨブ記」等

アジ・ダハーカ
古代イランで誕生したゾロアスター教に伝わる3つ首の竜で、暗黒神アンラ=マンユが世界を破壊する為に生み出したとされています。3つの頭はそれぞれ苦痛、苦悩、死を表しています。翼を広げると、その大きさは空を覆い隠すとまでいわれています。古代都市バビロンにあったクランク城に住み、神々に戦いを挑み、1000種類の魔法を使い大暴れしました。実際に叙事詩「シャー・ナーメ」では、ザッハークという人間に化けたりもしています。後に英雄スラエータオナに敗れますが、この邪竜の体内にはトカゲやサソリのような邪悪とされる生物や毒虫が大量に潜んでいて、アジ・ダハーカを殺すとそれが解放されてしまう為、結局山の地下に封印されただけでトドメを刺すまでには至りませんでした。しかし、終末の時に解き放たれて人や動物の3分の1を貪る事も、最終的には神話的英雄クルサースパに討伐される事も、既に決まっているとされています。「本格折り紙 入門から上級まで」という本に「三つ首の鶴」の折り方が載っており、この折り方を使えばアジ・ダハーカも折れるのではないかと考えて作った作品です。頭はドラゴンの基本的な折り方とし、翼をドラゴンらしくしたり、尻尾も折り方に独自性を出したりしてみました。それぞれの首に角度をつけてみると、なかなか面白い作品になりました。
属性:闇
伝承地域:イラン(ペルシア)
登場する物語:「アヴェスタ」「シャー・ナーメ」

上から見たところ
レインボー・サーペント
オーストラリアで暮らす先住民の間に伝わる精霊で、人間や動物、水、木等、様々なものを創り出した創造神でもあります。カラフルな色合いのカーペットニシキヘビのような姿で描かれる事が多く、地面を這って移動した事で渓谷や河川が出来たとされています。恵みをもたらす水神としての一面もあり、天候を操作する力も持っています。乾季の終わりになると雨を降らせてくれるそうですが、怒らせると大嵐や干ばつ、洪水等の災害を引き起こして人間に罰を与えるともいわれています。赤や青、黄緑、黄色の紙をそれぞれ半分の長方形に切って糊付けせずに重ね、紙のずれでカラフルさを表現してみました。最終的に尻尾は下向けに段折りしましたが、それにより自然な感じになりました。でも、今となっては紙の大きさのバランスはもう少し研究が必要だったかなとも感じています。
属性:水
伝承地域:オーストラリア等
登場する物語:オーストラリア先住民の伝承等

ゴルィニシチェ
ロシアの英雄叙事詩「ブィリーナ」で大暴れする竜で、首が3本あり、尾は12本、また、一対の翼を備える他、人語を操るといった知能もあるそうです。ズメイ・ゴルィニチ、ドラゴン・ゴルインチショ等と表記される事もあります。ソロチンスクという山に棲んでおり、その周辺から人間をさらっては監禁し、腹が減る度に食べていました。ある時、英雄ドブルィニャとたたかって敗れ、「私はあなたの妹になります」等誓いを立てて不可侵条約を結び見逃してもらうのですが、すぐに約束を破り悪さを働いた為、結局退治されました。この竜はアジ・ダハーカ同様に創作で作ってみたかったのですが、前述したように首は3本もあるし、尾に至っては12本もあるので、さすがに何枚かの紙を使って複合作品で折る事にしました。胴体は「あそべる たのしい 男の子のおりがみ」収録のウマと同じと思うかもしれませんが、折る前に座布団基本形を折っています。最初はそのまま折るつもりだったのですが、座布団折りをするとしっかり立つようになるんじゃないかと思い、座布団基本形からウマの胴体を折りました。そうすると、首や尾とのバランスもよくなりました。
属性:火
伝承地域:ロシア(ダマーヴァント州ソロチンスク)
登場する物語:「ブィリーナ」

後ろから見たところ。尾も何枚かの紙を組み合わせて作っています。組み立てる前に、中割り折りやかぶせ折りを使い、動きをつけてみました。
タラスク
南フランスの町タラスコンの名前の由来となったドラゴンで、レヴィアタンとアナトリア半島に棲む獣ボナコンの子どもです。全身が硬い鱗に覆われた半獣半魚の姿で描かれる事が多く、牛よりも太く、ウマよりも長い胴体と、先端が剣のように尖った牙を備えており、また、毒の息を吐くともされています。最初はガラテアに棲んでいましたが、後に海を渡ってローヌ川周辺の森に棲みつきました。水中に潜んで通りがかった人間を襲って食べていましたが、後にキリスト教の聖女マルタに退治されました。ドラゴンの中でもかなり変わった姿をしていますが、折り鶴の基本形から折り出すことは出来ないかと思い、試しに大きな折り紙で折ってみて、まあこれでいいかと思っていたところ、後にタラスクが6本足だったことが発覚し、複合作品で作り直しました。やり方を変えて魚の基本形から折り出した前半分と、座布団基本形から折り出した後ろ半分を組み合わせてみたら、6本足になっただけでなく、耳や顎も折り出せました。
属性:水
伝承地域:南フランス(タラスコン)
登場する物語:「黄金伝説」等

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