昆虫以外の虫
昆虫は節足動物の仲間で、体は頭、胸、腹の3つに分かれ、肢は基本的に6本、翅も基本的に4枚あります。ここで紹介するのは、昆虫ではありませんが、昆虫に近い節足動物の仲間達です。カタツムリやナメクジに関しては、節足動物ですらなく貝の仲間(腹足類)なのですが、よく「虫」として扱われる為このエリアで一緒に紹介します。
クモ
クモは昆虫と同じく節足動物の仲間ですが、鋏角類と呼ばれるまた別のグループです。昆虫の体は頭、胸、腹の3つに分かれていて肢も6本なのですが、クモの体は頭胸部と腹部の2つに分かれ、肢の本数も8本です。全ての種類が腹部の先にある「糸いぼ」と呼ばれる器官から糸を出す事が出来ます。コガネグモやジョロウグモのように、糸を使って網、いわゆる「クモの巣」を張ってそこにかかった昆虫を捕らえて食べるものが一般に知られていますが、アシダカグモやハシリグモ類、ハエトリグモのように歩き回って獲物を探すクモ、キムラグモやトタテグモ(トラップドアスパイダー)類のように地中に巣を構えるもの、ハナグモをはじめとするカニグモ類のように花や葉の上で待ち伏せして獲物を捕らえるもの等、その生態は様々です。

「折り鶴から折る おりがみ昆虫館」収録作品。肢は厚ぼったくなるので、紙がずれないように折ってください。前掲書の口絵も参考にして、細かな仕上げをしてみてもいいかもしれません。

「1枚のかみで折る おりがみむしむし昆虫園」収録作品。腹部のつまむ箇所がありますが、形が崩れないよう上手に整えましょう。

「2枚のかみで折ろう 昆虫おりがみ教室」収録作品。一番前の肢は、触肢と同時に前に曲げるようにして作ります。途中、「甲虫の仲間」エリアで紹介しているアトラスオオカブト、ネプチューンオオカブト、ノコギリクワガタの本体や肢と似たような折り方をします。
タランチュラ
イタリア南部の港町・ターラントの毒グモ伝説から名付けられたタランチュラは、正式な名称ではなく、キングバブーンやゴライアスバードイーター、アースタイガー、インディアンオーナメンタル、タイランドブラックといった、オオツチグモ科のクモを指す俗称です。大型で全身に毛が生え、いかにも毒々しく恐ろしげな外観ですが、タランチュラの毒は一般的なハチのそれよりも弱く、万が一嚙まれたとしても死に至るまでには至らないんだそうです(但し牙は大きいので噛まれるとそれなりには痛いです)。メスは上手くいけば20年以上も生きる種類もおり、ペットとしても飼育されています。ゴライアスバードイーター等一部は、腹部に刺激毛が生えており、危険を感じるとこの毛を飛ばして威嚇したりもします。同じ大きさの紙を2枚使う複合作品です。前半分・後ろ半分共に基本的な折り方は一緒です。腹部のひだを広げて膨らませるときには、紙が破れないようにしましょう。「あそべる たのしい 男の子のおりがみ」収録作品。

サソリ
ハサミのような前肢と尾の先端の毒針が特徴のサソリは、実はクモと同じ「鋏角類」の仲間です。デスストーカーのように猛毒を持ち、人間が刺されると死に至るような種類から、ダイオウサソリやフラットロックスコーピオンのように、あまり毒性の強くないものまで、種類により毒の強さは異なります。ハサミで獲物を固定し、尾の先端の毒針を刺して毒を注入し、鋏角で小さくちぎってその体液を飲み込みます。紫外線のライトを当てると体が緑色に光りますが、これは体内に合わせてある「β-カルボリン」と呼ばれる物質が光っている為です。日本では沖縄等にヤエヤマサソリとマダラサソリという、2種類のサソリがいますが、日本のサソリの毒はあまり強くないです。これはダイオウサソリのようなサソリの折り方です。変則的な折り方が出てくる、難しい作品です。本をよく見て、形を綺麗に整えましょう。「折り鶴から折る おりがみ昆虫館」収録作品。

ムカデ
ムカデは多足類と呼ばれる節足動物のグループで、頭部に牙のような「顎肢」と呼ばれる器官を持ち、これで挟むように噛みついて毒を注入し、昆虫や小動物を捕らえて食べます。漢字で「百足」と書き、肢の数も100本のように思えますが、歩くのに使う歩肢の数は、ゲジ目で15対、オオムカデで21または23対、ジムカデの仲間の中には173対もあるものもいます。人間が噛まれる被害が多いのはオオムカデ類ですが、「非常に凶暴で攻撃性が高い」「絶対に後ろに下がらない」という俗信や、多くの卵を産み、温めて守る事から、戦国時代にはムカデにあやかって甲冑や刀装具にムカデのデザインが取り入れられたり、旗差物にムカデの絵を染め抜いたりしていました。また、商店等でも肢の数から「客足が多い」、攻撃性の強さから「他店に負けない」という意味で縁起物に使われるようになりました。全てのパーツを鶴の基本形から作ります。オオムカデの場合だと、折り紙は24か26枚程度ならそれっぽいかなと思います。15cm角だとかなり大きくなるので、僕は折り紙を切って半分のサイズの正方形にしてから折って組み合わせました。「おりがみランド 虫のおりがみ」収録作品。

ダンゴムシ
ダンゴムシは名前に「ムシ」とありますが、エビやカニと同じ甲殻類のグループです。日本でよく見かけ、単にダンゴムシと呼ばれるのはオカダンゴムシですが、オカダンゴムシは元々日本にいた訳では無く、明治時代ぐらいにヨーロッパから入ってきたものと思われます。危険を感じると丸くなって団子のようになり身を守ります。主に落ち葉や雑草、動物の死骸等を食べ、分解者としての役割も担っています。簡単に出来るダンゴムシですが、背中のひだを広げて丸くする時、紙が破れないように注意しましょう。この作品に肢はありませんが、ダンゴムシの特徴がよく出ていると思います。「本物みたいな虫のおりがみ図鑑」収録作品。

カタツムリ
切れ味抜群の日本刀の上でも、珠がコロコロ動くそろばんの上でも、歩く事が出来てしまうカタツムリ。その移動能力は陸上の生物の中でもトップクラスともいわれていて、細い枝の上でも歩く事が出来てしまうんだとか。陸貝のうち、一般に殻の無いものはナメクジ、殻のあるものはカタツムリと呼んでいますが、殻のあるもののうち、殻が細長くないものをカタツムリと呼ぶ場合が多いらしいです。触角のある頭部下面には口があり、口内の上に顎板、底部には人間でいう歯に相当する、おろし金状の歯舌が2万本もあり、この歯舌をやすりのように使い、植物の実や歯、樹皮に生えるコケ等を削り取って食べています。童謡「かたつむり」に、「角出せ槍出せ頭出せ」とありますが、この「槍」とは、カタツムリが交尾の際に使う「恋矢」であるという説もあります。アジサイを折って、それと一緒に飾ってもいいですね。

「折り鶴から折る おりがみ昆虫館」収録作品。首の部分は展示に合わせて糊付け等するといいでしょう。紙を裏返して色を変える過程では、紙が破れないように注意してください。自立するように、最後の仕上げも肝心です。

「決定版!日本のおりがみ12か月」収録作品。触角は内側に折り込みます。
ナメクジ
先程カタツムリの項目でもちょこっと触れたように、陸貝のうち殻のあるものはカタツムリ、無いものはナメクジといっていますが、ナメクジ科、コウラナメクジ科、オオコウラナメクジ科のいずれも、進化の過程で殻を無くしていったグループなのです。カタツムリの貝殻が徐々に退化して小さくなり、体内に入って見えなくなればナメクジの形になるのですが、実際にはその途中の形態の種類もいます。日本には種としての「ナメクジ」の他に、チャコウラナメクジや大きくて不気味な印象を与えるヤマナメクジというのもいます。「デゴイチ」の愛称で知られるD51形蒸気機関車は、1つの形式としては最も多い、1115両が製造されましたが、その中でも初期に製造されたタイプはボイラー上部のドーム、つまりは砂箱と給水暖め器が煙突と一体化し、長く伸びているその形状から、「ナメクジ」の別名でも呼ばれているそうです。割と作りやすく、15cm×15cmの紙でも結構大きく仕上がります。頭の部分の折り方がややこしく感じますが、折り筋を使って折るので、折り筋をしっかりつけると折りやすいです。「1枚のかみで折る おりがみむしむし昆虫園」収録作品。

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